第2章 私が貴方を好きになる迄の話。
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「それでね、実弥さん何時も同じ水まんじゅう
買ってくるの。本当、優しい人だよねぇ。」
恋柱様のオススメらしい甘味処には、
可愛らしく着飾った女の子が沢山いて少し気恥しい。
「同じ物をですか?飽きません?」
「私は好物だから飽きないけど、実弥さんは飽きないのかなぁ?だいたい週一食べてるから…。」
「ふふっ。(不死川さんは目的が違うでしょうし
飽きることなんて無いでしょうねぇ。)」
「…?何笑ってるの?なんか変なこと言った?」
「いいえ、全然変ではありませんよ。」
何気ない話をしながら甘味を頬張る。
たったそれだけの事なのにやたらと特別な気がして、
私はこの時間を少しでも引き伸ばしたいと
往生際の悪い提案をした。
「そうだ。水まんじゅうのお礼に
おはぎ…買っていこうかなぁ。」
「ふふ。そうしてあげて下さいな。
とっても喜びますよ。(それはもう全身全霊で。)」
「あのね評判のいいお店があるの。そこ行こ?」
「…うーん、いいですよ。それ位なら。」
きっと私の思惑なんてバレているんだろう。
仕方ないな、と笑ったしのぶはやたらと大人びて見えて
ほんの少しだけ寂しい気持ちになった。
「……本当はね、皆で一緒に食べたいんだ。」
その寂しい気持ちにつられて本音がこぼれ落ちる。
「が言えば皆で食べれると思いますよ?」
何の話かしのぶには直ぐに分かったのだろう。
私の手をそっと握って
楽しそうな顔で覗き込んできたから
私は可愛らしいその仕草に口元を緩めた。
「んーん、それはしたくないの。」
本当は実弥さんが甘味を買ってきた時に、
玄弥君も呼んで3人でお茶をしたい。
もしかしたら、私が駄々を捏ねれば
優しい2人は嫌々頷いてくれるかもしれないが、
それだけはどうしても出来ないんだ。
「確かに私は2人に仲良くなって欲しいけど、
ソレには踏み込まないことにしてるんだぁ。」
「……らしいですね。」
お互いに大切に思っている事を知っているからこそ、
私はそれに安易に踏み込む事は出来ない。