第2章 私が貴方を好きになる迄の話。
「で、ここ数日顔を見る度に心臓が煩いと。」
そう、私は本気で困り果てているんだ。
「…うん。…滝行より息が苦しいの。」
「……………そ、それは相当苦しそうですね。」
「そうなんだよ、心臓が潰れそう。」
本当に心臓が押し潰されそうな位苦しい。
「………理由は、わかっていますよね?」
ごく近くで見えたしのぶの藤色に心臓が鳴る。
それを気が付かれないようにそっと息を着いた。
「………わかんない、かな。」
「………私達は嘘をつかない約束でしょう?」
私は、しのぶのこの大きな瞳を見ると、
約束云々差し引いたとしても嘘なんて付けなくなるんだ。だから先程の小さな抵抗など無意味な事は分かっていた。
「…どうしようしのぶ。
私、玄弥君の事好きになっちゃったみたい。
……その、男性として。」
結局素直に自白した私にしのぶは品よく笑う。
「ふふっ、そうでしょうねぇ。」
この笑顔は大好きだが、
先程した自白には問題が山積みなのだ。
と、私はわざとらしく頭を抱えた。
「やる事、いっぱいあるのに…。」
今はそれどころでは無いのだ。
色恋事に現を抜かす前にやるべき事は山のようにある。
「…ねぇ。」
「……ん?」
そんな事を思い私が変わらず頭を抱えていたら、
しのぶがある嬉しい提案をしてくれた。
「甘味処にでも行きませんか?」
その言葉に私は目を輝かせた。
「………………。いいの!?」
「…ふふっ、そんなに嬉しいんですか?」
「そりゃそうだよ!!行こうっ!早くっ!!」
柱でもあり蝶屋敷で治療もして、
自分の鍛錬もしているしのぶと
甘味処なんていつぶりだろうか。
私は着替える時間も勿体ないと
隊服のまま__クスクス。笑うしのぶの腕を引いて
甘味処へ急いだ。