第2章 私が貴方を好きになる迄の話。
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「……玄弥君、ほら、お風呂入るよ?」
「う”ー、朝水浴びっから良い。動けねぇよ。」
「駄目!!今日は水温低かったから温まって!
あぁ、ほら寝ないのっ!!起きてよっ!!!」
泥のように縁側付近で潰れている玄弥君の腕を
無理くり引っ張って起き上がらせると、
玄弥君は目をつぶったまま、
面倒くさそうに頭をかいた。
「…ん”ー…入るよ…わかったってば。」
「…それでい……え?待って何してんの!?」
何を思ったのか__ガバッ。と
衣服を脱いだ玄弥君は眉間に皺を寄せたまま、
顔を私にグッ。と近づけた。
「…………風呂…どこ…。」
「(…な、何コレ!!心臓破裂しそうっ!!)」
何時もより低い声に何時もより男っぽい顔。
見たことの無いその仕草に心臓がバクバクと煽った。
「ねぇ、…。」
「………うひぁっ!?」
固まる私の腕を掴んだ玄弥君は
更に私に顔を近づけて
ものすごく気だるそうに声を出した。
「ねぇ、……風呂…。」
「…だ、駄目ぇっっ!!!」
―バチンっ!! 「ぶへっ!?」
謎の色気に耐えきれず
思いっきり横っ面を引っぱたくと、
玄弥君は目を丸くして私の事を凝視した。
「「…………………。」」
何となく気まずい沈黙が部屋に広がる。
「…な、え、…痛てぇ…。凄く痛い。」
「ご、ごめん…あの…寝惚けたみたいだから!!」
「だからって…。まぁ…目は覚めたよ。」
けど、そんな殴んなくても良いだろ。とボヤきながら
風呂へと向かった背中を私は愕然と見送ったのだが、
なにやら自分の身体が異常訴えている。
「…心臓が…煽りまくってる…。」
バクバクと心臓が煩いのだ。
「……滝行より息が苦しいんだけど…。」
上手く息が出来なくて胸元を抑える私は
頭がおかしくなってしまったんだろうか。
「………か、かっこよかったぁ…。」
とりあえず今わかる事は、
寝ぼけた玄弥君がかっこよかった。
という事だけだった。