第2章 私が貴方を好きになる迄の話。
「俺、昔…兄ちゃんと約束したんだ…っ。」
__ジャリっ。と地面の土を握る手が白くなるほど
拳に力が入っていたので、私はその上に手を乗せた。
「一緒に、家族を守ろうって…。」
何故かは分からないけれど、
苦しそうな声を聞いていたら、
彼のお兄ちゃんへの気持ちと、
私の悲鳴嶼さんへの気持ちは同じ様な気がした。
「けど、俺は何も出来なくて…。
……挙句、守ってくれた兄ちゃんに
人殺しだなんて言っちまってさ…。」
何があったのか、聞きたくは無い。
「そっか。…色々あったんだね。」
「あぁ、すげぇ…。色々あったんだ。」
きっと色々あったんだろう。
それだけで充分気持ちは伝わった。
玄弥君の顔を見て、声を聞いたら、
そんな事、痛いくらいに分かるから。
「俺はいつか兄ちゃんを守りてぇんだ。」
涙を流しながらへにゃっと笑う顔は
とっても優しげで私は、__とくん。
と鳴った鼓動を誤魔化すように
茶化しながら言葉を投げかけた。
「ふふっ、相手は風柱だけど大丈夫?」
「だ、だから俺は柱になるんだよ!!」
実弥さんは風柱だ。
そんな彼を守りたいだなんて、
中々強欲な願い事だろう。
それでもきっと玄弥君は
絶対にそれを諦めないんだと、そう思う。
「柱になって、俺が強いってわかればさ、
ちょっと位は認めてくれて、それで…。
兄ちゃんの事守れるかもしんねぇだろ?」
頬をかきながら気まずそうにそう告げた姿を見て、
私は彼が驚くであろう自分の願望を教える事にした。