第2章 私が貴方を好きになる迄の話。
「…人間には向き不向きがある。
玄弥君にはきっと剣は向いてないんだと思う。」
「………っ…。」
悲鳴嶼さんは私に
『お前の基準で教えるな。』と言った。
確かに私は未熟で
教え方が下手くそだったのかもしれないが、
呼吸の使えない鬼殺隊士が剣に向いている。と、
私はどうしても言えなかった。
「けど、……強くなれるよ。」
私は、分かっていたのに目を背けていたんだ。
「……肋痛いでしょ。……折れたよね、今日。」
「折れてねぇっ!!こんなの…何でもねぇっ!!」
「そう言えるから、強くなれるよ。」
不死川玄弥という始めての弟弟子は
剣の才能は無いが、
努力する才能と諦めの悪さは人一倍ある。
「私に理不尽な事言われても
こうやって文句も言わずに頑張れるんだから、
玄弥君は絶対強くなれるよ。」
昼間に私の言った『なんで出来ないの!』なんて、
彼にとって随分と理不尽で子供っぼい罵倒だっただろう。
それでも彼は文句の1つも言わずに
こうやって必死にしがみついていたんだ。
そんな人間が強くなれない訳が無い。
強くなるまでは、この可愛い弟弟子を私が守るから。
下手くそかもしれないけれど、
私に出来ることなら何でも教えよう。
「…私が、絶対に玄弥君を強くする。」
私が真っ直ぐ見つめながら誓いを立てるように
思いを告げると、彼はクシャッと顔を歪めて
罪を白状するかのように、苦しそうに呟き出した。