第2章 私が貴方を好きになる迄の話。
□齧り付く気持ち
「…なんで出来ないのよっ!!!」
「……っ…くそっ!!」
玄弥君を可愛いと思っていても鍛錬は別物だ。
悲鳴嶼さんが不在の時は私が稽古をつけるのだが、
正直玄弥君は出来がいいとは言えない。
「はぁ…。(びっくりする位…筋が悪い…。)」
どう教えたらいいのか。
そもそも呼吸が使えないので単純な打ち込みや
基礎鍛錬を教えるだけなのだが、
私の頭の中のできる事と
玄弥君のできる事が違いすぎて
何処をどうしたら良いのか、私は頭を抱えていた。
「、……己の基準で指導をするな。」
そんな私に、任務から帰ってきた悲鳴嶼さんは
当たり前の様にそう言った。
「お前は自分の事を勘違いしている。…簡単にできるものでは無いんだ…わかるだろう?」
「………なんと、なくは…。」
何となくは分かっている。
何故か私には才能があることも、
自分は普通の人間より頑丈で力が強いことも。
それでも、ソレを本当の意味で理解して
指導するのは私にはまだ難しい。
「(そもそも、教える側の人間じゃないよ。)」
だから、私はまだ教える側の人間ではない。
今だって上手くいかないからと
1人で勝手に苛立って、
師範である悲鳴嶼さんに迷惑をかけている。
そう思う私の頭に分厚い手が_ポスンと落ちてきた。