第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
「……そ、そういう所だよ…。風邪ひくぞ?」
風呂上がりの濡れた髪のまま、緩く着た着流し姿でコロンと仰向けになっているにため息が出た。
「んー、けどこれが気持ちいいんだよ。」
「………せめてコレ肩からかけとけよ。」
この姿は刺激が強くて目に毒だ。と、俺が羽織を手渡すとそれを受け取ったはへにゃりと目を細めた。
「玄弥君てさ…優しいよね。」
「………いや、普通の事だろ。」
「んーん。とっても優しいよ。」
俺の羽織を羽織ったは猫の様に背伸びをした。
「……んんっーっ!眠たくなってきた。」
言動まで猫の様なを見ていたら、何故かフッ。とココ最近考えていた事を思い出したのでそのまま聞く事にした。
「。俺、前に聞いただろ?」
そうなったら良いな、と思っていることがひとつある。
「悲鳴嶼さんと恋仲にならないのかって。」
「あ、うん。けどそれは……。」
「兄ちゃんなら?…兄ちゃんならどう?」
色々と複雑な気持ちは確かにあるが、兄ちゃんとが恋仲になったら俺は心から嬉しいと思う。
「実弥さん?…何で突然実弥さんなの?」
__コテン。と不思議そうに首を傾げたは子供みたいで、何となく自然と頭を撫でた。
「…何で、かぁ。…そうだなぁ。
…兄ちゃんに、幸せになって欲しいからかな。」
優しい2人が一緒になったら。きっと幸せな毎日が送れるだろう。何時でも他人の事ばかりで、自分の欲を隠しがちな2人だからこそ、お似合いだ。と、素直にそう思う。
「ほら、やっぱり凄く優しいよ。」
「(あぁ…またこの変な感覚だ…。)」
俺の言葉を聞いて、何とも幸せそうに__へにゃり。と笑う顔に心臓がザワついた。最近この溶けそうな笑い顔を見ると毎回同じ感覚になるんだ。