第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
「(コレはきっと、が欲しいって。そう思ってるんだろうな。…俺も、随分鈍感だった。)」
の事をもう鈍感だなんて言えない。このザワつくような喉から手が出そうな、腹が減る感覚はきっとが欲しいからなんだろう。どうにも出来ないけれど、兄ちゃんと幸せに。なんて思っているけど、残念ながら俺のこの気持ちは日に日にでかくなっている。
「玄弥君?どうしたの?…寒い?」
1人取り分開けていた距離を詰めるように四つん這いになって此方へ近寄るが見ていられなくて、俺は慌てて立ち上がり背を向けた。
「ねぇ、その格好。」「…格好?」
緩い着流しで前屈みになれば、胸元が危うく見えそうになり、四つん這いになったせいで自然と上目遣いになる。それがどれだけ唆る姿か、きっとはこれっぽっちも分かっていない。
「男の前で…ソレは。駄目だよ。」
その後がどんな顔をしていたのか。俺はソレを見ることは出来なかった。
「どうしよう…。顔…マトモに見れねぇ…。」
その代わりに鏡で見た自分の顔は、トマトか林檎かと思う程赤く染っていて、俺は頭を抱えた。
「(の事が好きだ…ど、どうしよう。)」
完璧にそうだ。色々言い訳をつけて誤魔化してきたし、これまた理由をつけて諦めていたけれど、もう確信してしまったこの気持ちに俺は酷く戸惑った。
__これが、俺が彼女を好きになるまでの話。