第5章 初めてのお客様
カフェには、いつの間にかいたはずの吉井がいなかった。七瀬はふと先程の自分の行為に注意が入らなかったのはそのせいだったのかと、気づいた。
(それにしても…あんなに真っ赤になってしまうとは…)
コーヒーを運んだ後、四季はそそくさとバックヤードへと戻って行った。
カフェでの接客は既に七瀬には慣れたものであると同時に後輩に教える立場の人間である。そのため、いつも後輩に教えるようにしてしまった。
(申し訳ないことをしてしまいましたね)
その頃、四季はというとバックヤードでバクバクと鳴る心臓を落ち着かせようと、深呼吸した。
「あ、関谷ちゃん付いて行けなくてごめんね。ちょっと裏の準備があったから…」
「だ…いじょうぶです!」
「あ、そうそう、今さっき連絡があったんだけど、他の生徒が今日は来られないみたいなの。せっかくの初日なのにごめんなさいね」
新学期になったばかりで忙しい生徒もいるとのことだった。
「じゃあ、お店にもどりましょうか」
「は…はい」
フロアに戻ると、七瀬は持って来てたであろう本を読んでいる。妙に静かに過ぎていく時間に、四季は落ち着かなかった。
一時間ほど七瀬はカフェにいた後、帰っていき、四季はとりあえず落ち着きを取り戻した。
その後、客は二人ほど女学生が来ただけであった。夕方になり、寮に帰るころには、野々村と会話をするだけで、特にやることはなくなっていた。
「まぁ、こんな感じで暇なんだけど、これからもよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「じゃあ後は任せてもらって大丈夫だから、またお願いね」
「はい!」
こうして四季のカフェでの活動が始まった。