第5章 初めてのお客様
カランカラン…
「あ、いらっしゃいませ」
「あれ?今は取り込み中でしたか?」
そう言った男はいつもと違う雰囲気の店内に、野々村にそう尋ねた。
「いえ、大丈夫ですよ~」
「またお前か…敵地の視察にでも来たのか?」
「吉井さん…そういうわけじゃないと何回言ったら信じてもらえるんですかね…」
男は苦笑いしながら吉井を見た。
「多分、無理だろうな」
「僕もそんな気がしてきたよ…」
はぁ…と男が溜め息をついた後、店内の奥から足音がした。すると、野々村はバックヤードを覗き込んだ。
「あ、準備出来た?ちょうどお客さんが来たところだよ~」
「あれ?もしかして、もう新しい子入ったの?」
野々村の会話から察するに、慣れていない人物が奥にいるであろうことが男には想像できたのである。
「そうそう、また可愛らしい後輩が入ってくれたんだ。羨ましいだろう!」
「…うん、そうだね」
いつものこととはいえ、吉井の攻撃的な態度に男はもう一度溜め息をついた。
「すみません、今行きます!い、いらっしゃいませ!」
準備の終わった四季は急いで店内へと戻り、初めての客にドキドキしながら挨拶をした。
「あ…」
「え?あぁ!…な…七瀬先輩!」
そこにいた客…男は七瀬であった。