第43章 はじめまして
どう切り出したものだろう。
“ 貴方、私にキスしましたよね ” シンプルに聞くならば、こうだ。しかし、なんとも微妙な字面ではないか。もし間違いだったら、ただの自意識過剰の恥ずかしい奴だ。
「答えが出たんだ」
『…え?』
私が考えあぐねていると、天の方から口を開いた。しかし、突然そう言われても ピンと来ない。
「1ヶ月くらい前に、言ったでしょう。考えておくって」
『……あぁ!思い出しました。たしか…
私がTRIGGERの為に身売りするのは嫌だと、駄々を捏ねたんでしたね。貴方は』
「駄々って…。まぁそう」
天は、言ったのだ。
“ どうして、嫌なのか自分でもよく分からない ” と。
私は天の隣に並ぶ。そして同じように木の柵に背中を預けた。
『それで?教えてくれるんですよね。その答え』
「いいよ。答えは、意外とシンプルだった。
ただの、妬きもちだよ」
『…すみません。私、自分で思っていたより酔っ払ってるらしいので 失礼します』
「大丈夫。キミの聞き間違いじゃないから」
コテージの方へ1歩踏み出した私の腕を、天がしっかりと掴む。
『ちょっと、分かりかねます。妬きもちって…。一体、誰に対して、何したいして妬いてるんです』
「…聞きたい?」
『やめときます』
「キミが、体を売る相手にだよ。キミに触れられる人間が、羨ましくて仕方ないんだ」
『やめるって言ったのに!』
「ふふ」
天は、まるで上機嫌だ。
キスはやはり私の勘違いだったのか?とさえ思えてくる。いつもと何ら変わりはない彼を見ていると、そうとも取れるが…。
いや、違う。いつもと変わりはないのは、飄々とした態度だけだ。さっきから天は、いつもなら絶対言わないような言葉を口にしているではないか。
『…天がそんな事を言うなんて。まるで龍が口にしそうな、甘々のデレですよ…』
「他の男と比べないでくれる?それが、たとえ龍だったとしても不愉快だよ。
まぁ、キミの事が好きだという点においては、ボクも龍も同じだろうけど」
『貴方…サラっと好きとか…』
「サラッとじゃない方が良かった?」
『サラサラでお願いします』