第41章 歳の差のせいにだけはすんなよ
少しして、楽の発作も無事に治り。時刻は19時となった。本当なら晩御飯時分なのだが、空腹を訴える者は誰もいなかった。
やはり、昼食が遅過ぎたのだろう。結局、今日の夜ご飯は食べないという事で落ち着いた。
と、いう事で いよいよ花火タイムである。
『9980円の、特盛りバラエティパックです』
「花火に1万はヤバイな」
「うわ、大きい!一体どれだけ入ってるんだろう」
「手持ち花火に、打ち上げ花火。あ、それに仕掛け花火もありますよ!」
「ねぇ。これ、全部やるの?」
「やるに決まってんじゃん!!すげぇー!テンション上がるー!こんないっぱい花火用意してくれた中崎さん、さいこー!」
皆、手始めに手持ち花火から手を付ける。
と、その時。私の耳元を羽音が掠めた。あまりの不快感から、大袈裟に上半身を動かしてしまう。
蚊でもいるのだろうか?TRIGGERもそうだが、MEZZO"が虫刺され跡だらけになってしまっては大変だ。
小鳥遊プロからお預かりした、大切なアイドルである。傷物にして返すわけにはいくまい。
私は、蚊取り線香を取りにコテージへと向かった。
『あった』
花火と一緒に、蚊取り線香も用意していたというのに。どうして持ち出すのを忘れてしまったのだろう。
もしかし私は、自分でも気付かぬ間に 浮かれていたのだろうか?
くすりと。1人きりの部屋で笑みをこぼした。
「えりりん」
私の事をこう呼ぶ人物は今も昔も、この世に2人だけ。それは、四葉兄弟だ。
『!!
び…っくりした。どうしたの、タマちゃん』
「へへ。えりりんが中に入ってくの見えたから。俺も来た」
そう言う環は、少し遠慮がちに笑った。
「なぁ、えりりん…。えっと…もう、怒ってない?」
『あぁ落書きのこと?
うん。仕方ないから、許してあげる。でも、他の人には絶対にしたら駄目だよ?落とすの凄く大変だったんだから』
「分かった。やっぱ、優しいな…あんたは」
『タマちゃんだから、特別ね』