第40章 好きな人だったら、俺にもいんよ
「言ったな四葉。じゃあ次はお前やってみろよ。これより笑える奴だからな」
「へへ。任せろって!ほらがっくん、早くペン貸してー」
「ん」
環は楽からペンを受け取る。
どうして、僕はこの時。彼を止める事をしなかったのだろう。嫌な予感は、確かにしたのに。
そんな後悔は先に立たず。だって環は、もう…やってしまったのだから。
《 肉 》
額に、バッチリくっきりと。そう書いた。
「ぎゃははは!ほら、チョー笑える!!」
「笑えねぇよ!!」
「うわ…ちょっと、これは見ていられないな…」
「水性でしょ?洗えば落ちるだろうし、平気じゃない?」
「あの、八乙女さん。付かぬ事をお伺いしますが、そのペンって まさか…」
「……………油性」
誰もが絶句した。
しーーーんと、部屋は静まり返る。
「どうしてくれんだよ!!人んとこのプロデューサーを、プロレス好きな正義の筋肉超人にしやがって!!」
「うわ。凄い分かりやすい説明」
「な、なんだよ!元はと言えば、がっくんが始めた事じゃんかぁ!」
「俺が書いたのは膝だ!立ちゃ隠れんだよ!お前ほんとこれどうすんだ!冗談でもやって良い事と悪い事がだな!」
「ちょ、2人ともっ、しーっ!」
「そうですよ、静かにしないと!中崎さんが起きて…」
『ん……ぅ』
心臓が、ばくんと跳ねた。身動ぐ春人を前に、きっと全員が同じ心地だろう。
皆んな一様に、彼の一挙手一投足を見守った。そして願った。どうか、まだ起きるな。寝ていてくれ と。
しかし、現実はそう甘くはない。
春人は、薄っすらとその瞳を開いた。
あぁ、僕達はどうなってしまうのだろう。
ピーマンを食べさせられただけで、あれだけ怒るのだ。もし彼が、いま自分の身に起こっている事を知ったら…
←