第40章 好きな人だったら、俺にもいんよ
TRIGGERのリーダーらしく、楽が乾杯の音頭を取る。
私をはじめ、楽、龍之介と壮五の4人は缶ビール。そして環はコーラを持ち、紡と天は烏龍茶を手にしている。
「んじゃ、第1回 TRIGGERといっしょの撮影、お疲れ!収録の大成功を祝して…」
乾杯!と、全員の声が響いた。
肉の焼ける匂いを嗅ぎながら、琥珀色の液体を喉の奥に流し込む。
どうして昼間から飲む酒は、こうも美味しく感じるのだろう。やはり背徳感こそが最大のスパイスとなっているのか?
「っは…、美味しい」
「そーちゃん、頼むから飲み過ぎんなよな」
「っ美味い!なんで昼間の酒はこうも美味いんだろうな!」
「はは。本当に、それは謎だよな。
あ、ほら焼けたよ。環くん、お皿持っておいで」
「!!
うーーす!」
『小鳥遊さん。お皿を。龍に何か、入れてもらって来ます』
「あっ、いえ!悪いですから、自分で取りに行きますよっ」
アイドルと言えど、バーベキュー場を前にすればこんなものだ。
肉を食べ、酒を飲み、いつもよりも少しだけ大きな声で話す。いたって普通の人と変わらない。
そして、恋愛トークに花を咲かせたりもする。
「四葉は高校どうだ?楽しいか?」
「まぁまぁ」お肉美味い
「まぁまぁかよ。じゃあ、学校に好きな女とかいないのか?」
「んー…学校には、いないけど、好きな人だったら、俺にもいんよ」
楽の質問に対し、得意げに答える環。私は思わず、口に含んだビールを噴き出しそうになる。
「えぇ!?た、環くん好きな人がいるの!?僕聞いてないんだけど!」
「そーちゃんには言ってねーもん」
「ははっ。ま、メンバーにも言えねえ事はあるよな。
で?誰だよ四葉の好きな奴ってのは!学校にはいないって事は、仕事関係だろ?」
「……へへ、秘密」
環は、口元に立てた人差し指を当てる。そして私の方へ顔を向け微笑んだ。
彼が口を噤んでくれたことに、ほっと胸を撫で下ろしたのだが…
この話題は、このまま収束しなかったのである。