第39章 組み紐をひいたのは
「じゃあせめて、なんか甘いの入れて!はちみつとか、あとは果物とか!」
「え!でもそんな事をしたら、カレーが甘くなっちゃうよ?」
「いいんだってば!それで!」
そう言うと環は 食材の並んだテーブルから、ある赤い食材を持てるだけ持って、ポイポイと鍋の中へ放り込んだ。
きっと彼は、甘い果実か何かだと思ってそれを選んだのだろう。しかしその実体は…
「た、環くん!!やっぱり環くんと僕は一心同体だね!凄く嬉しいよ!」
「はぁ?」
「本当は僕も “ それ ” を入れたかったんだけど遠慮してたんだ!ありがとう環くん!」
「なんで、そーちゃんがそんな喜んでんのか分かんねーんだけど、なんか俺…目がショボショボして来た」
「え、大丈夫?玉ねぎを切った時みたいな感じ?」
「んー…そん時とは、比になんない」
天は、恐る恐る手元にある進行用のフラットファイルに視線をやる。そこには、用意された食材の詳細が記されていたのだ。
環がさきほど、鍋に投入した食材は…ブートジョロキア。言わずもがな、世界でもトップクラスの辛さを誇る唐辛子である。
天は、ばっ と顔を上げて私を見た。
言葉は無かったが、彼の顔は物語っていた。
「………」
(あれ、ボクが食べるの?)
『………』
「………」
(ねぇ、あれ、ボクが食べるの!?)
熱視線から逃れようにも、天の強い目力からは逃げられなかった。仕方なく、私は ゆっくりと首を縦に動かした。
「…なぁ龍。気のせいか、目が痛くないか」
「え、楽も?俺の気のせいかと思ってた。なんだか、目がヒリヒリするんだ」
「だよな。っ、目に滲みる…」
MEZZO"の作り出した魔鍋は、離れた所にいるTRIGGERにまで影響を及ぼしていた。
『ちなみに、ジョロキアの辛さは100万SHUとも言われていますね』
「??
なんですか?その単位」