第39章 組み紐をひいたのは
ガサ。と草垣の揺れる音がした。それは、隣のコテージとこちらを遮る為のものだった。
こちらのバーベキュー場と 隣のバーベキュー場は、その草垣で仕切られているのだ。
なんと、今それを乗り越えて男性が3人。こちらへ侵入してきたのだった。
「お。まじで撮影してんじゃん!」
「アイドルいる?アイドル!」
「いる…はいるけど、なんだよ。男ばっかじゃね?」
私は、咄嗟に女性2人を背にかばう。
それと同時にスタッフ達が2人、足早にその男達の元へと駆けて行く。
そして そのチャラついた見た目の男達に、すぐさま声をかける。
「ちょっと君達!勝手に入って来られたら困るよ!」
「そうですよ。今こっちは撮影中で」
「はぁ?知るかよそんなもん。撮影か何か知らんけどさぁー、うるさくてこっちは迷惑してるんだっつーの」
「こっちはオーナーにきちんと許可を取ってるんだ!とにかく早くここから出て行ってくれ!」
スタッフ達の言葉にも、男達は耳を貸そうとしない。こういう奴らには、正論を言ったって意味が無い。何故なら、それが正論かどうかを判断出来るほど 物を考えていないのだから。
私が溜息を吐いたのと同時に、咥え煙草をした男が 紡に目を付ける。
「お!なんだ、女の子もいるじゃーん!」
「まじだ!ねぇねぇ、君もアイドル?俺達と遊ばない!?」
「わ、私はアイドルではありませんが、こんな迷惑行為は困ります。ご迷惑をかけてしまっているのは申し訳ありませんが、早く出て行って下さい!」
「出て行って下さい!だってさ。かわいい〜」
彼女の丁寧なお願いも虚しく、男達は紡の真剣な表情を嘲笑した。
私は、どうすればこの場を穏便に片付けられるか考える。しかし答えが出るよりも先に、構成作家様の堪忍袋の緒が切れてしまう。
「ちょっとあんた達ねぇ。さっきから聞いてれば勝手ばっかり!ちゃんと許可は取ってるって言ってるじゃない。これ以上何かするつもりなら、警察呼ぶわよ!」
「はぁ?おいおい。自分が声かけられなかったからって、僻んでんじゃねえよ。
おばさん」
どうやら、穏便に済まそうなどと 悠長に考えている時間はなさそうである。
すぐさま、この害悪どもを排除しなくては。