第37章 どうか俺の
ただの “ ごっこ遊び ” に含ませた、俺の本当の気持ち。たったこれだけ、匂わせるだけのアプローチだというのに。口から心臓が飛び出してしまいそうだ。
でも、きっと彼女の心には 何も届いていないのだろう。何故なら俺はエリにとって、ただの友達に過ぎないのだから。
教室を後にした俺達は、音楽室へ移動した。そこには、エリの大好きなピアノがある。
どうやら、彼女がお気に入りの海外メーカーのピアノだったらしく。流れるような動作で弾き出そうとするのを、必死になって止めた。
後は食堂も見に行った。彼女は、いつもここで昼御飯を食べているんだね。と言って、楽しげに笑って見せた。
はしゃぐ彼女を見ていると、俺も嬉しくなった。それに、実は俺もエリと同じくらいに楽しんでいた。
もしも、俺達が本当に同じ学校に通っていたなら…どれくらい幸せだったろう。
疑似体験でこんな有様だ。きっと、同じ学校に通う同級生だったなら。俺は幸せ過多で死んでしまっていたかもしれない。
帰り際、何かに気付いたような彼女が声を上げた。
『あ!』
「どうかした?」
『もしかして、ここの学校プールある!?』
「あるけど、エリのところにはないのか?」
『そうそう、プールないんだよね。私、水って好き。ねぇ万理。最後にプールが見たい!』
「いいね、行ってみようか」
25メートルの長さ、横に並ぶのは6コース。そんな一般的なプールだというのに。彼女は感嘆の声をあげた。
そしてすぐさま、靴と靴下を脱ぎ捨てて駆け出した。俺は彼女が置き去りにした それらを集めながら後を追う。