第35章 いつのまにか、その種は芽吹いてた
「はぁ…タマがセフレで、お兄さんが顔見知りねぇ。普通にショックだわ」
本気か演技かは定かでないが、がっくりと首をうなだれた。
若干の申し訳なさを感じたが、環の前で堂々とセフレ宣言をするのは はばかられる。
いや、そもそも私と大和は本当にセフレと呼べる関係なのだろうか?体の関係を持ったのも1度だけであるし、大和は私に嘘を吐いて事に至った訳だし…
私は頭を悩ませる。
「タマはいいなぁ、エリのセフレになれて。秘訣でもあんの?お兄さんにも教えてくんない?
もしかして、すげぇ “ 立派なモン ” 持ってるとか?」
『大和、下品』
ニヤニヤと冗談を口にした。いくら環がセフレの意味を分かっていないとは言っても、あまりヒントを与え過ぎるのはまずい。もしかすると、本当の意味を悟ってしまうかもしれない。
「…立派なモン……? あ!
寮の冷蔵庫に2個あるけど、どっちも俺のだから、ヤマさん食うなよ」
「誰も王様プリンの話してないんだよなぁ」
『杞憂過ぎた』気付く気配すらない
どうか出来るだけ長い間、環は環のままであって欲しいと 心から願う私であった。
「蕎麦まだかなぁ…。あ!俺いまのうちにトイレ行ってこよーっと」
環は店内をキョロキョロと見回し、お手洗いのマークを見付ける。そしてパタパタとそちらへ走っていった。
すかさず私は、大和に向かって警告を飛ばす。
『ちょっと大和。タマちゃんに変な事言っちゃ駄目。純粋無垢なタマちゃんを穢したら私怒るから』
「大丈夫だろ。さっきだって実際、何も無かったし。タマの頭の中は、王様プリンとあんたと妹で出来てる」
大和はそう言って、私の警告をさらりと躱した。