第32章 TRIGGERだから
『いやしかし。いくら2週間という時間があるとはいえ、今から歌とダンスを完璧に仕上げるのは厳しいでしょう。
披露するのは来年にして、今年のオン大は見送った方が無難だと思いますが』
自分が姉鷺と同じ提案をしているとは、つゆ知らず。それが現段階での最適解だと思ったのだ。
なぜなら 急ぐ必要が、なくなってしまったから。
私が2週間前に、この楽曲を提供出来ていれば話は違っていたのに…
「珍しいね。プロデューサーにしては弱気じゃない?」
「ああ。それに、何も分かってねえ」
「そうだね。春人くんは、大切な事を忘れてるよ」
何も分かってない。大切な事を忘れている。
一体それは何なのか。
俯いていた私は、顔を持ち上げて彼らを見る。
「楽と龍の言う通りだよ。
ボクらが誰なのか、もう忘れた?」
自信たっぷりに私を見つめる3人。
「おい春人」
彼らのその強い視線を浴びれば、いやでも思い出す。
「俺達の名前を、言ってみて?」
彼らに不可能な事などない、最強のアイドルグループだという事実を。
『…ふ、ふふ。はは、そうでしたね。
貴方達は、TRIGGER。最高で、最強のグループです。
2週間。やってやれない事はない。私も全力でサポートします。
必ず獲りましょう。今年の オン大、最優秀賞』