第31章 こっちを見ろ!!
「はい」
天は、私にタオルと経口飲料水を手渡した。
『あ、ありがとうございます』
「どうせ、ここのところ何も口にしてなかったんでしょ。そこで急に大声出したり、精神が不安定になったりして身体がびっくりした。そんなとこじゃない?」
『多分、仰る通りかと』
こんな状態まで身体が追い込まれたのは初めてだったので、何が正解かは分からない。が、とりあえずそういう事にしておこう。
過度なストレスと、食欲不振。それらが重なれば、人の体はおかしくなってしまうらしい。
私はとりあえず腰を下ろし、天から受け取ったペットボトルのキャップに手をかける。
しかし、手がプルプルしてなかなか開けられない。
そんな様子を見た楽が、ペットボトルを取り上げる。そして開封してから返してくれた。
「お前、どれだけ弱ってるんだよ」
『…TRIGGER無しでは、生きられないくらい。ですかね』
「ふぅん。冗談言えるくらいには復活したんだ」
「あはは。俺も、春人くん無しじゃもう生きていけないかも」
「龍は黙ってろ。俺はな、まだ怒ってるんだぜ」
楽は仁王立ちで、私を見下げて言った。
『えっと…ごめんなさい』
「何が悪かったか分かってて謝ってるんだろうな」
『……多分』
「多分じゃ駄目だろ!おい春人。俺は」
「ねえ」
天が、冷静な声と目で私と楽の会話を遮った。
「何だよ天。俺は、こいつにどうしても言ってやらないと気が済まないんだ!
大事な話をしてんだよ。邪魔するな」
「じゃあ聞くけど。
大事な話をするのは、ここでいいの?」
天は、座る私を見降ろして言った。私はその冷たい視線を浴びて思い出したのだ。
いま自分が 腰を下ろしているのは、大便器だという事実を。