第29章 《閑話》とあるアイドルプロデューサーの休日
私達は、フロアで軽く体を揺り動かしながら会話を続ける。
相変わらずフロアで1番注目を集めていたが、次第にそれにも慣れてきた。
『視力、悪いんですか?』
「…日常生活に困らない程度には、良いです」
『なら、とってしまいましょう』
彼は、ひょいと眼鏡を取り上げてしまう。すると、今まで私が必死になって隠して来た小さな目が露わになってしまう。
「あっ、でも、眼鏡を取ったら目がっ」
『大きければ良い、というわけではないですよ。それに、眼鏡をかけていては余計に小さく見えるでしょう。
貴女の切れ長で奥二重の瞳、可愛いですよ』
「〜〜っ、」
『もっと出していきましょう。それには…この長い前髪も邪魔ですね』
「こ、これは勘弁して下さいっ!」
私の懇願に耳を貸すはずもなく、彼は自分のポケットに手を入れる。そして、その手には黒いピン止めがあった。
手早く私の前髪をまとめ上げると、そのピンで上部に固定してしまう。
「な、なっ、」
『こら、触らない。
私に任せてくれると言ったでしょう』
「い、いい、言ってないです!」
私が露わになった額を手で隠してそう言うと。彼は、おや そうでしたっけ?と楽しそうに笑うのだった。
その後も、私の顔面改革は進む。
『肌、白くて綺麗ですね』
「でも…そばかすが、目立つんです。だから、嫌いなんです。肌の色も、このそばかすも」
『チャーミングじゃないですか?海外の綺麗な白人女性も、そばかすがあるでしょう。
化粧で消す事は簡単ですが、それは勿体無いと思いますよ』