第4章 …ねぇ。もしかして、泣いてる?
———翌日、車内
「って…昨日はあんな可愛い事言ってたくせによ!!」
「1人で先に会場行ってるなんて」はは…
「まぁ、普通はアイドル置いていかないよね」
「拗ねないの。アンタ達ねぇ、春人ちゃんが何時に出てったか知ってるの?5時よ5時。私なら絶対に前乗りしちゃう」
「いや、それだけ早いんだったら前乗りしろよ。まじで…」
「楽、分かってないわねぇ。多分あの子は、前日ギリギリまでアンタ達と居たかったんじゃないの?
昨日何か、大切な話したんでしょうが?」
「…じゃあ、なんだ…。アイツは、昨日俺達と話をする為にわざわざ会社に残ってて、前乗りしなかったのかよ」
「多分ね」
「「「………分かりにくいな」」」
『へっくしゅ』
懐からハンカチを取り出して口元にあて、小さなくしゃみをひとつ。
現場に到着した後、音響や照明スタッフとの打ち合わせ。ステージのチェック、挨拶回りはおおかた終わらせた。
後はメンバーと合流して、スポンサーへの挨拶を…。あ、衣装も箱から出しておかないと。
やらなければならない事を頭の中で整理しながら、テキパキと体を動かす。
『…よし』
1人1人の衣装を、丁寧に箱から取り出してハンガーにかける。
キラキラと輝く衣装を前に、目を瞑ると…容易に想像出来る。
これを身に纏って、歌い踊る彼らを、観客が見上げる姿。
誰もがTRIGGERの一挙一動に目を凝らし、完全に虜になる。
そして…トロフィーを手にする3人の笑顔が。