第4章 …ねぇ。もしかして、泣いてる?
『では、お疲れ様でした』
言いながら ポケットに手を入れて、通勤バイクの鍵を探る。
「え、ちょっと待ってそれだけなのか!?」
龍之介は少しだけ動揺して言った。
私は取り出そうとしたキーを、再びポケットの中に落とす。
「普通もっとなんか、あるだろ。明日は頑張れよ、とか。絶対勝てるぞ、とか…」
『…そういう類の言葉は、社長から散々貰ったと思っていたので もうお腹いっぱいかなと』
「……」
天は、黙ってこちらを真っ直ぐに見つめている。
彼は2人のように、激励の言葉を求めたりするタイプではないだろう。
と、思っていたのだが。
「ボクは、キミからの言葉が欲しいよ」
『……はい?』
聞き間違いだろうか。まさか……天が……
デ、デレた。
「キミをプロデューサーとして認めるかは置いておいて」
置いとくんだ。
「明日のブラホワまでに、ここまで最高のかたちに持って来れたのは…キミの努力のおかげもあると思ってるから」
思いもかけない言葉に、私の視線は泳いでしまう。チラリと楽、龍之介の方を見る。
2人は、私の顔を見て。天の言葉を聞いて。頷いていた。
彼らも天と同じ気持ちだという事だろう。
「だから、そんなキミの口から聞きたい。
明日、ボク達は勝てると思う?」
ニヤリと笑う彼の口元は、私なんかの答えを聞く前から 自信に満ち溢れていた。
でも、あえて言おう。貴方達の、聞きたい言葉を。
『私には、貴方達以外がブラホワのトロフィーを持っているヴィジョンが浮かびません。
絶対です。TRIGGERは最強ですから』