第27章 ワタシのガールハントセンサーも鈍ったモノです
私は天を自宅まで送り届け、その足で小鳥遊事務所へ向かう。
赤信号。私は携帯を取り出した。大和へ アポを取ろうとして気が付いた。
彼の連絡先を、まだ知らないことを。
すぐに、環に連絡を取ってから 大和に取り次いで貰う方法を思い付く。
だが、コールボタンを押したところで、信号が青に変わってしまった。
スピーカーに切り替えて、携帯を置いて運転に戻る。
しかし、呼び出し音は しばらく経っても鳴り止まなかった。
時刻はまだ20時過ぎだ。もしかすると、環はまだ仕事中なのかもしれない。
小鳥遊事務所にかけてみようか、とも考えた。しかし、他事務所のプロデューサーが大和を指名して連絡をするのは…
なんだか、引き抜き等のいらぬ誤解を招きそうだったのでやめた。
こうなったら、もうアポ無しでIDOLiSH7寮へ出向いてしまおう。大和が いなければいなかったで、諦める事にした。
私は、用意した手土産が置かれた助手席を見て、1人頷いた。
近くのパーキングに車を停め、寮のインターホンを押す。そして、カメラの前で姿勢を正した。
「ハーイ、今出ます!
おや アナタは…TRIGGERのところのプロデューサーじゃありませんか。このような夜更けに、一体何のご用でしょう?」
『…えっと、あの。インターホンに出ず、アイドルである貴方が直接ドアを開けるのは…少し危ないと思います』
「……わざわざワタシにそんな説教をする為に、ここへ来たのですか?」
そんなはずはない。と言いたかったが飲み込んだ。
あまりに危機感の薄い彼に、お小言を零してしまったに過ぎないのだ。
もしやナギだけでなく他のメンバーも、インターホンカメラとインターホンマイクとの付き合い方を知らないのでは?
という疑念を持った、その時。
中から一織の声が聞こえた。
「六弥さん?どなたかお客様ですか?」
「TRIGGERのプロデューサーが、わざわざワタシを虐める為に姿を現しました」
「は?」
『い、和泉さん。こんばんは』
私は部屋の中を覗き込み、堪らず一織に助けを求めた。