第26章 居なくなっちまうんじゃねえの?
【side 二階堂大和】
「…俺って…自分で思ってたより、結構若かったみたいだわ」
『おめでと…』
結局俺は、その後もう一度彼女を抱いた。一晩で3回いたせば、そのような自己評価を下しても 誰も文句は言わないと思う。
喉の渇きを覚えた俺は、ふらつく足に喝を入れ、なんとか冷蔵庫まで辿り着く。そして中からミネラルウォーターを2本取り出した。
俺よりも疲労が蓄積してる事が見て取れるエリに、そのうちの1本を手渡した。
「ん、」
『あー、ありがとう…』
受け取ったペットボトルのキャップが硬かったのか。それとも握力が著しく低下するほど全力を出し切ったのか。理由は分からないが、彼女の手はプルプルと痙攣していて。
このままでは、いつ水にありつけるのか分かったものではない。
「はは…。どうぞ」
『あ、ありがと』
エリからは新品を受け取り、代わりに自分の飲みかけの物を手渡した。
俺の飲みかけなど不愉快だろうか?と頭を掠めたが…。まぁ、そんな些細な事を気にするような関係では無くなった と、思う。
水を飲みながら、ちらりと彼女を盗み見る。
『んく んく』
「………」
今だに信じられない。この、んくんく水を飲んでいる可愛い生物が!ペットボトルのキャップを開ける事も出来なかった ひ弱な生物が!
本当に、あの 春人 だなんて。
『ん? なに?』
「いや べつに?可愛いなと思って、見てただけ」
『!!ば、馬鹿にして…!』
「なんでそうなるかな!してないから。っていうか、今夜はこのまま泊まってくだろ?」
『え、あー…。そうだね、代行呼ぶのも面倒だし、そうしようかな』
「代行って…、お前さんバイクだったよな?バイクに代行なんかあるのかよ」
『あるよ?車より高くつくけど』
そんな新しい知識が増えた事よりも、エリと今夜 同じベットで寝られる事の方が、よっぽど嬉しかった。