第23章 素敵な衣装ですね
違和感があった。
小鳥遊 紡が、和泉 一織を連れて来た事に対してだ。
私にプロデュースのノウハウを教えて欲しいという申し出は、素直に光栄だと感じた。
しかし普通、訪ねてくるならば1人で来るか。もしくはリーダーである大和を同行させるだろう。それが自然な流れではないだろうか。
わざわざ高校生である彼を選んだ理由は絞られる。
一織が、IDOLiSH7をマネージメント、もしくはプロデュースに深く関わっているのだろう。私はそう結論付けた。
しかし この見解には、私のカンが多分に含まれる。まぁべつに このカンが外れていようと当たっていようと、損をする人間はいないのだから、どちらでも良いのだが。
ただ、面白いと思った。
『……』
(だって、高校生アイドルが 自分を含めたグループのセルフプロデュース…。
やっぱりIDOLiSH7、面白いなぁ)
「なんだよ、上機嫌かよ」
楽にそう言われるまで、私は自分の口角が上がっていたとは気付いていなかった。
『…不機嫌よりはいいでしょう』
「ボク達を除け者にして、随分と楽しいお話をしていたんだね。で?どんな内容の会話を楽しんだの?」
『トゲが凄いですよ』
ソファに腰掛けた私の後ろをとって、天は低い声を出した。
「俺は春人くんが嬉しそうだと、自分も嬉しくなるけどな!」
『龍…あなたって人は、本当に出来た人間ですね』
「おい、自分だけ良い子ぶるなよ」
「えっ?普通じゃない?他の人が幸せそうにしてるの見たら、こっちまで嬉しく感じるのって」
「間違った事は言ってないけど、それ真顔で言ってて恥ずかしくないの?」
「全然」
「そうだよな。龍は真顔でそういう臭い事を平気で言える奴だったな」
もしも世の中が龍之介のような人間で溢れかえれば、それは平和な世が築けるのだろう。
そして その平和な世の中には、私のような人間は…存在意義を保てなくて。きっと生きてはいけないのだろう。