第22章 私にも、出来るでしょうか
『何故、駄目なのか。答えは簡単。それは、あなたが “ アイドル ” だからです。
アイドルはね…誇り高く、そして輝いていないといけないんです。
たとえファンが見ていないとしても、です。
もしもプライドを売るような行動を取ってしまえば、あなたが放つ光が霞む。
芸能人とは、そういうものです』
……あなたは さっき
自分が本当は どういう人間だったのか忘れてしまったと、悲しげに目を伏せたけれど。
『あなたは笑って、ただこう言ってやれば良い。
“ そんな茶番より、もっと面白いものを見せてやるからIDOLiSH7を起用しろ ”
あぁ勿論、最高の笑顔を添える事を忘れずに』
私には分かる。
今、私の目の前で微笑む あなたこそが、本当だ。
その笑顔からは、心根の優しさが滲み出てしまっているから。
『汚い役目は、全部マネージャーに任せれば良いんです』
「え」
「は、はい!私、頑張って回ります!」ワン!
『その意気です。ちなみに私、100回まわった事ありますよ』
「え゛っ」
何が冗談で、何が本気か分かりづらい…
でも、環がどうして彼を気になっているのか…理解出来た気がした。
私の中にあった、彼に対する “ 気になる ” という気持ち。
少しだけ、ほんの少しだけ…
環の “ 気になる ” に近付いたのだと、自覚した。
『では、このへんで。
お2人に話を聞いてもらって、私も自分の考えを改めて整理する事が出来ました。ありがとうございます。
非常に有意義な時間でしたよ』
「こちらこそ!とても勉強になりました!」
『小鳥遊さんが、和泉さんをアイドル業 “ だけ ” に専念させてあげられるよう。私でよければまた、話くらいならいつでも。
では』
パタン。
と、ドアが閉まってから私とマネージャーは顔を見合わせた。
「今のって…、えっ!
私、一織さんがアイナナをプロデュースしてくれてるって事、口を滑らせてないですよね!?」
マネージャーも私も、当然 その事実は彼に話していない。
だが、春人は気付いていたのだろう。私が、影でIDOLiSH7をプロデュースしている事を。
そして、今回 彼から本当に話を聞きたかったのは、マネージャーではなく私の方であると。
「…私、もう彼に関しては驚くのをやめました。キリがないんで」
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