第20章 出来ますよね。貴方達なら
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「し、信じられへん…」
「天くん…あれが、足を怪我した人間の動き…?」
痛くない、はずがない。
どれだけテーピングを巻いて痛みを抑えても。気持ちを奮い立たせても。
痛みを感じないわけがないのだ。
しかし、今の彼の動きは神がかっていた。
ダンスだけではない。歌や、表情の細部に至るまで。理想的だ…。
今の天の動きをされてしまったら、私ですら怪我に気付ける自信が無い。
その、全身全霊をかけたパフォーマンスを見ていると、涙が出てしまいそうになる。
それに、なんて…
楽しそうなのだろう。
「は、…はぁっ、」
「天!お前、さすがに凄過ぎだろ…!」
「足は大丈夫か?天!」
会場が割れるような拍手と歓声の中、彼らは裏へ帰って来た。
「春人」
『…え』
天が、私をプロデューサーではなく、春人と…
「ちゃんと見てた?」
『はい』
「あははっ、完璧だったでしょ?」
なんて、楽しそうに笑う…。
『…はい。まさに、プロフェッショナル。お疲れ様でした』
私は天の肩を担ぎ上げ、裏口へと向かう。
姉鷺が予約してくれた病院に移動する為だ。
『タクシーを呼んでありますので、すぐに行きましょう。歩けますか?もし歩行が困難なようなら…
私、多少無理してでもお姫様抱っこも検討しますよ?』
「…たった今、もう一回ライブが出来そうな気すらしてきたよ」
私と天の後を、楽と龍之介がついて来る。
「俺達も病院行くよ!」
「4人だったらタクシーもギリギリ乗れるだろ」
付き添う気満々の2人を、どうやって止めようか考えていると。
姉鷺の声が響く。
「ちょっと待ちなさい!あんた達は駄目。
考えてごらんなさい。こんなイケメンが4人も、病院の待合室に並んでる光景を!あり得ないでしょ。目立つなんてレベルじゃないわよ」
姉鷺の素晴らしい説得に、感謝しかない。
『助かります。楽と龍と、それにこの後の 会場の諸々の事。よろしくお願いします』
「任せて。あなたは天の事、よろしくね」