第19章 こんなにも好きなのに酷いじゃない?
「それに、アタシ思ってたんだけど。なんだか アンタ達、最近凄く距離が縮まったわよね」
何かあったの?という姉鷺に、私は 箸を止めて返答をする。
『…ずっと、意地を張っていた私に 彼らが歩み寄ってくれたんですよ』
私はあくまで、プロデューサーとアイドルとして。適正な距離を空けたまま付き合いを続けていくつもりだったのだが。
彼らが気持ちをぶつけてくれて。そして、歩み寄る事の大切さに気付かせてくれた存在がいて。
そのおかげで、今こうして 彼らとかけがえのない時間を過ごす事が叶っている。
『私、TRIGGERが 大好きなんですよね』あはは
「あら可愛い。でもちょっと待ちなさい!ねぇアタシは?アタシは春人ちゃんの事こんなにも好きなのに酷いじゃない?」
いつの間にかベットの脇に座っている姉鷺。そして私の頬をつんつんして唇を尖らせる。
『え、いや…、わ、私も…好きですよ。姉鷺さんのこ』
「それにしてもぉ」
くそぅ!!
恥ずかしい気持ちを押し殺して、頑張って気持ちを伝えようとした努力を返せ!
「社長が知ったら、驚くでしょうね」
『う…』
社長からは、出来る限りメンバーとは距離を取るように言われている。
それなのに、彼らの事を名前で呼び。出来る事ならもっとずっと一緒に仕事がしたいと思っていると知られたら…
『や、やっぱり…怒られるでしょうか?怒られますよね』
「そうねぇ。まぁ雷は落ちるでしょうね?特大の」
私は、社長室で彼に叱咤され、身を小さくする自分を想像した。
『あの…、姉鷺様…どうかこの件は 社長にはご内密に…』
「ふふ。どうしようかしらね」
彼は、唇に人差し指を当てて 妖艶に微笑んだ。
(特別に、秘密にしといてあげるわよ。
アタシも前のあなたより、メンバーと打ち解けて生き生き働いてる 今のアンタの方が好きだから)