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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第18章 あれ?俺って…アイドルだよな




「……はぁ」


楽が溜息を吐きたくなるのも無理はない。
ついに、彼のデート決行日になっても お相手は現れなかったのだ。


「…フラれた」


天の言葉に、ピクリと肩を震わせる楽。


「楽…」


龍之介ですら、同情の目を向ける。


「ほらほら天、龍之介!はそろそろ出るわよ。早く車に乗りなさいな!」


パンパン!と手を打ち合わせて姉鷺が2人を車に誘導する。
楽以外の2人はそれぞれスケジュールが入っているのだ。その付き人は姉鷺に任せてある。


「じゃあ、ボク達は行ってくるよ」

『はい。行ってらっしゃい』

「また後でな。楽」


龍之介の言葉に、手を上げるだけで返事をする楽。


扉が閉まると、気まずい雰囲気が私達を包んだ。


『念の為、貴方は建物内で待機をしていて下さいね』

「分かってる」


彼は立ち上がると、ふらりと部屋を出ようとする。


『どちらへ?』

「レッスン室で、体動かすんだよ」


そんな悲しそうな背中に、私は気が付くと こう言っていた。


『付き合いますよ』


ポケットにPHSを入れ、いつ内線があっても出られるようにして。私は彼と共にレッスン室へと向かった。

柔軟を手伝いながら、話しかける。


『まぁ…こういう事もありますよ』

「あってたまるか。デートすっぽかされてんだぜ。あれ?俺って…アイドルだよな。
…こんな事、生まれて初めてだ」


チラリと時計を見ると、今ちょうど午前11時。本当ならば、お相手が事務所に到着してる時間だ。


『そうですね。不思議な事もあるもので…あ、もしかしたらお相手は 買ったCDをまだ開けてないのかもしれませんよ?お仕事で多忙だから…とかで…』


私は、自分で言って ドキリとした。嫌な予感が全身を駆け抜ける。
まさか…。いや、そんなはずは…


「春人?」

『す、すみません。ちょっと野暮用を思い出しました』


私は彼にそう告げると、その嫌な予感を払拭する為、仕事部屋へと走った。

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