第17章 光栄の至り
—————
「帰らないの?」
会場から事務所へと戻り、定時が過ぎても 自分の仕事部屋から離れない私。
そんな私に、半ば呆れるように天が言った。
「お前のことだから、今日中に集計終わらせたいんだろ。
それで ブース毎の売上とか、ブース毎の行列の人数とかをまとめたデータ、明日俺達に叩き付ける気だぜ。絶対」
キーボートを触る手を止め、私は楽を見上げた。
『…驚きましたね。正解です』
「やっぱり」
「はは。楽しみだよ」
付け加えれば、直接見るのが叶わなかった 彼らの新曲披露の映像も確認するつもりだ。
『貴方がたは帰って休んで下さい。
それに、私が残っている理由はそれだけではなくて、おそらくもうすぐ連絡が』
その時。
内線電話の音が、私の言葉を遮った。子機のボタン、2番が点灯している。一般電話窓口が設けられている事務所からの内線だ。
『中崎です。
……はい。回してください』
やはり、思っていた通りの連絡だ。この電話があると思っていたから、私は一応この場に待機しておいたのだ。
3人も、なんとなく電話の内容が気になるのか、会話に耳を傾けている。
私が、回してくれと頼んだ2秒ほど後。プツ、と小さなノイズが聞こえる。どうやら繋がったようだ。
『もしもし。
初めまして。TRIGGERのプロデューサー、そして今回の企画の担当者の 中崎春人と申します。
早速のご連絡、ありがとうございます。
…えぇ。はい。
この度は、ご当選おめでとうございます』