第17章 光栄の至り
「それで?今度は何が “ 降って来た ” の?」
「曲はこの間出来たばかりだろ?また新曲のアイデアか?」
『はぁ…楽。神がかかったメロディーや歌詞は、そうぽんぽん出て来ませんよ』
私は首を振る。
「その溜息やめろ、腹立つ!もうコーヒーこぼしてても助けてやらねぇぞ」
『それは困ります』
楽とのやり取りを、笑って聞いていた龍之介だが、そろそろ彼も痺れを切らしたらしい。
「で?今度は一体、何を思い付いたんだ?」
ワクワクした顔を見せてくれる龍之介を始めとした3人に、私はノートを開いて見せる。
『閃いたのは、極めて新しい 企画です。
名付けて…
《ドッキドキ♡憧れのTRIGGERメンバーとデートしちゃおう》
です』
「「「ダサ」」」
3人の心からの言葉が刃となって、私に突き刺さる。
「お前…本当はセンス無いだろ」
「まさか、今までボク達の曲を作ってたのは別人…?」
「ち、違うよな!ほら、あれだ!春人くんは今日、壊滅的に調子が悪いっていうか…脳が死んでる日なんだよな!」
『龍のフォローが1番キツイんですけど、悪気が無ければ何を言っても良いとでも?』
私は、足に駒の付いた椅子に腰掛けたまま、ホワイトボードの前に移動する。
『とにかく、概要だけ説明します』
キュポっと水性ペンのキャップを開け、ホワイトボードに滑らせる。
『皆さん…“ ソシャゲ ” ってやります?』
「ゲームはしない」
「俺もやらねぇな」
「テレビゲームは、家族や友達とする事があるけど…。俺もそっちの方はしないな」
3人とも、やらないという答えだ。なんと勿体無い。
『私は、割と好んでプレイするのですが』
「いつそんな時間あるんだよ」
ソシャゲを知らないという事は、あの楽しい醍醐味も知らないのだろう。
『 “ ガチャ ” って、最高なんですよね』