第17章 光栄の至り
至高のアイデアが生まれる瞬間。
それはきっと人それぞれだろう。
熟考の末に考え至る者もいれば、はたまた、突然 天からのお告げのように降って湧いたように手にする者もいる。
私の場合は、完全に後者だ。
さらに言えば、そのアイデアを思いついた瞬間は、まるで雷に打たれたかの如く 全く動けなくなってしまう。
素晴らしい情報が 濁流のように押し寄せて来るため、それを逃さないようにするので手一杯なのだ。瞬きの一つするのも難しい。
さらに困った事に、その妙案は突然 頭の中に現れる。なので時と場合を一切選べないのだ。
それが例え…
マグカップに、熱々のコーヒーを注いでいる瞬間であったとしても。
「うっわ!お前またかよ!!熱っ!ちょ、溢れてるから!コーヒーぶちまいてるから!おい春人 ポットから手ぇ離せ!!」
「また何か、良いアイデアが浮かんだようだね」
「ようだね。じゃねぇよ天!早くタオル持って来い!」
「楽っ、タオル持って来た!春人くんが火傷する前に早く拭いて!」
『失礼しました』
私は3人に謝罪をしながらも、一心不乱にペンを走らせる。
降りてきたアイデアを、出来るだけ早くまとめたいのだ。
「全くだぜ。アイドルに何させるんだお前は」
「はは。もうあの光景も見慣れたけどな!」
龍と楽は、そう言いながらも後片付け役を買って出てくれた。
「まぁ前みたいに、運転中の時よりは安全だよね」
「あったな、そんな事も。たしかあの時は、赤信号突っ切りやがったんだ」
「そうそう。アクセルベタ踏みの時に “ 降りて ” きちゃったんだよな」
たしかに、困った体質である。
素晴らしいメロディーや歌詞、良い発想が降ってくる度に これなのだ。
そう考えれば、常々彼らには、迷惑をかけている。