第118章 Another Story
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ゆっくりと、天が自分の中に沈んでいく感覚が堪らない。ほぼ無意識で、私は彼の後ろに両脚を回した。早く全部が欲しくて、脚を使って腰を引き寄せる。
そうして全てが中に収まると、分身の先端が奥の壁にキスをした。私達は幸福な圧迫感で満たされて、長く熱い息を吐く。
「 ん……、エリ…」
『天……っ』
すぐには動こうとしない天。私の中を、確かに味わっているようだった。
彼は右手を私の顔の横に突き、左手を頬に添える。ゆっくりと潤んだ瞳が近付いてきて、それが閉じられるのと同時に口付けが落とされた。
きゅん、と思わず彼の分身を締め付けてしまう。すると少しだけ、彼は眉の間に皺を作った。好きで、愛おしくて、どうしようもなくて、私の口から自然とその言葉がついて出る。
『ぁ…、天、好き…!』
「うん…。嬉しい…」
『好き…っ』
「……もし、ボクがアイドルじゃなくても?」
私を見下ろす天は、僅かに微笑んでいた。
「エリは、アイドルのボクを好きになった?もしボクが、才能も無いただの七瀬天だったとしても…キミはボクを、愛してくれたのかな?」
あぁ、そうか。
私は昼間、自分が口にした言葉を思い起こす。
“ 私は、天の才能に惚れています!彼の1番近くで…プロデューサーとして傍にいたからこそ、誰よりも惚れ込んだんです ”
『……ふふっ』
「ちょっと。全然笑うところじゃないんだけど」
『そうだよね、ごめん。でも、あまりに天が可愛…いや、愛おしくて』
「うわ…誤魔化されそう」
私は天の背中に両腕を回す。
『不安にさせた?ごめんね。
大好きだよ、天。貴方がたとえ、何者であったとしても。私は
天が好き…天だけを、愛してる』
抱擁の後は、目を丸くした天に口付けた。