第116章 心、重ねて
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「春人」
私の名を呼んだのは、トウマであった。次に出番を控えたŹOOĻ。彼らもまた4人揃って、貴重な時間を私に使ってくれる。
「その…こんなタイミングでしか伝えられねぇから、聞いてくれ。今の俺達があるのは、あんたのおかげだと思ってる。腐ってた俺達を、ここまで引っ張ってくれてありがとう。道標になってくれて、ありがとうな。
離れてても、俺はずっと…あんたのことを」
「愛してる」
「そう。愛して…ってトラ!!邪魔すんなよ頼むから!時間ねぇんだって!」
「なんだ?じゃあトウマはこいつのことを愛していないのか」
「え゛、いや…、そういうわけじゃ…!とにかく俺は、離れてても大切に想ってるって伝えたかったわけで!」
言葉を詰まらせ、しどろもどろのトウマ。あまりの慌てっぷりに、私を含め他のグループのメンバーも笑顔を零した。
そんな中、わたわたするトウマの隣から悠があっさりと言う。
「はっきりしないの。春人、オレも虎於と同じであんたのこと愛してるから」
「あらあら。亥清さんも、いつの間にか大人になってしまって。あぁ勿論、私も愛していますよ」
『相変わらず、貴方達は愛情表現がストレートですね。私も、愛してます。例えトウマが私のことを愛してくれなくても』
「なっ、愛してるに決まってんだろ!!」
誘導されるようにして出た愛の言葉。トウマは自分がそれを口にしたことを徐々に自覚して、顔を赤くしていく。シャイなリーダーはさて置いてと、巳波が柔らかに言葉を紡ぐ。
「そんな、貴女を愛しているŹOOĻからのお願いを聞いてくれますか?
これから大舞台に立つ私達を、貴女の言葉で焚き付けて。もっとも、これはもう…貴女の仕事ではないかもしれませんけれどね」
『私の言葉で、愛する貴方達が奮い立ってくれるなら喜んで。
怒りや、負のエネルギーさえも舞台の上では光に変えられる。そんなアイドルは唯一無二。これまでŹOOĻが経験した、痛いも苦しいも悲しいも、全部をステージの上に持って行って。そして、観せてください。私に、ファンに、4人が歩む快進撃の続きを』
彼の瞳に、より一層の熱が宿る。
「ふふ、どうしましょう。思ったよりも、やる気にさせられちゃいました」
ŹOOĻは、IDOLiSH7と入れ替わりでステージへと旅立った。