第116章 心、重ねて
ファンに喜んでもらえるようなライブにしたい。
それが、私達全員の共通認識。その為に、自分達に出来ることは何か。皆が一丸となって案を出し合った。
いくつか採用された案の中で、最も大掛かりなもの。それは “アイドル自身がライブを作る” という取り組みだ。
従来であればスタッフや裏方に任せている仕事を、全てではないがアイドル本人達が行う。
具体的に言えば、IDOLiSH7は衣装デザインの担当。16人で歌い上げるトリの際に着るTシャツのデザインを考えてもらう。
Re:valeはその楽曲を作成してもらい、ŹOOĻは舞台演出。そしてTRIGGERは振り付けをすることとなったのである。
大好きなアイドルが主体となり作り上げるライブ。きっと大勢の人に喜んでもらえることだろう。
「珍しく早いね。今日はもうあがり?」
仕事部屋に現れ言ったのは、天である。開いていたドアをわざわざノックして、綺麗な立ち姿で微笑んでいた。
『えぇ。久し振りに時間を作れたので、これから小鳥遊さんのところへ様子を見に行こうかと』
「進捗の確認?」
『そうですね。あとはまぁ、激励も兼ねて』
「ボクも行こうかな」
『その目で衣装がどれくらい仕上がってるか見ておきたいんですか?天らしいですね』
感心と皮肉の意を込めてそう告げると、天は心外そうにしながらも笑みを返す。そして、ハンガーラックにかけてあった私のジャケットを手に取った。
「ううん。普通に、息抜き」
差し出されたそれを受け取って、私も彼に笑顔を向ける。
天はいつから、弟に会うことが息抜きになると素直に口にするようになったのだろう。それを明確に答えることは出来ないが、本心を自然に表に出してくれることが嬉しくて堪らないので、良しとする。