第113章 もう一生、離さない
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くちゅっと、湿り気のある音が聞こえるせいで耳が熱くなる。時折 跳ねてしまう腰のせいで、ベットのスプリングが軋む音もまた卑猥に聞こえた。
もう優しい愛撫は十分なのに。まだ楽は、濡れた割れ目に触れるのをやめない。指を2本に増やして、浅いところの壁を擦る。それと同時に、親指でまた恥豆をこねた。
『っひ、ぁっ…!んっ、んぅー、!』
桃色の声は、途中から楽に食べられてしまう。舌を吸われ、次第に早くなる指の動きに犯されれば、意に反して噴き出してしまう熱い飛沫が楽の手の平を汚した。
キスの隙間を見つけて、私は訴える。
『楽っ、それ、もう や… だぁ、』
「いや、なのか?」
『ん、やだ…』
「じゃあ、俺にどうして欲しいのか教えてくれ。どうしても、エリの口から聞きたい」
そう言って、あまりにも真っ直ぐにこちらを見つめるから、私の心と身体は溶け出してしまいそうだ。
とてもじゃないけど、顔など直視が出来ない。だから私は楽の首の後ろに腕を回して、こっちへ引き寄せた。そして耳元で囁く。
『きて、楽』
…なぁ。俺達、どこかで会ったか?
2年以上も顔すら合わせていなかった私を一目見て、かつて楽はそう告げた。貴方はずっと、私が消えてしまってからもずっと、その影を追い続けていたのだろう。
会いたい。死ぬほど
酒が入ると貴方は、決まってLioに逢いたいとそう言った。その度に私の心臓は、鷲掴まれるように痛んだ。胸が痛む理由など、嘘を吐いている罪悪感からだと思っていたが、本当のところはきっと違ったのだ。
面倒な男に惚れられたと思って、諦めてくれ
二度目のデート。告白と共に貴方は私にこんな言葉を添えた。今から覚えば、この時に私はもう察していたのかもしれない。私が楽から逃れることなど、出来ないのだと。私は貴方ほど、面倒で一途な男を知らない。
もう一生、離さない
それは、心がずっとずっと待ち望んでいた言葉。それを、他でもない貴方から貰えた私は…世界で一番の幸せ者だ。
『きてっ、楽…!』