第111章 それは決して遠くない未来①
自慢ではないが、身体は頑丈な方だ。ここ数年の間に、殴られ蹴られ。ナイフを向けられ、銃口を向けられても、こうしてピンピンしているわけであるし。それに、喉のことを除けば持病だってない。
だがしかし。やはりどれだけ気を付けていようとも、数年に一度くらいは風邪菌という奴に負けることもある。
「こんにちは。今日はどうされましたか?」
『少し、風邪っぽいんです。ここ1週間ほど、微熱が続いていまして』
「分かりました。では、順番が来たらお呼びいたしますので掛けてお待ちください」
『はい、お願いします』
内科の受付。保険証を渡し、代わりに体温計を受け取る。脇に挟んでしばらく待つと、意外と早く計測は終わった。37.2度。家で計った時と大差はない。
風邪はひき始めが肝心と言うし、午前中は特に重要な案件は入っておらず事務仕事を処理する時間に充てようと思っていたので、それならばとこうして内科医に足を運んだというわけだ。
だるい身体に鞭打って腰を上げる。そして体温計を受付に返却し、その帰りにブックスタンドに立ち寄った。絵本や新聞、雑誌などが並んでいる。私はその中から、週刊の女性誌を手に取った。
水を滴らせて目線を流している龍之介が、表紙を飾っている。