第109章 ……………あ
翌日。私と天は、一織の部屋を訪れていた。
「2人とも、随分とお疲れのように見えるのですが」
『……ちょっと、ね』
「既に山場を1つ、越えた感じだよ……」
さきほど私と天は、記者会見の件を楽と龍之介に伝えたのだ。予想はしていたが、とんでもない反発を受けたのだった。偶然とはいえ、天を味方に引き込んでいたのが功を奏した。もしも、3人全員から反対されれば私の心は折れていたかもしれない。
「説得は成功したんですか?」
『微妙』
「うん。微妙」
結局は、最後の最後まで快い返事はもらえなかった。だから私と天は言いたいことを伝えた後、逃げるようにここへやって来たのだ。
「……愛され過ぎるというのも、考えものですね」
『え、えへへー』
「嫌味ですが?」
雑談もそこそこに、早速 昨日の続きを話し合う。まだまだ完璧とは言えないが、次第に内容が煮詰まっては来た。
すると昨日同様、また私の携帯が鳴った。しかし今回の相手は、了ではない。私の為にホテルの一室を無償で貸してくれるという、虎於様であった。いま彼の電話を無視するわけにはいかない。
私は2人に断りを入れて部屋を後にし、落ち着いて電話が出来る場所へ移動した。
「……はぁ」
「九条さん、実はまだ記者会見の件に反対なのでは?」
「まあね。でも認めるしかないでしょ…。エリ本人が、過去を清算することを望んでるんだから」
「でしたら、早く割り切ったらどうですか。決まったことをいつまでもズルズル引きずるのは非効率ですよ」
「……ねぇ、和泉一織。もし陸がキミに一切の断りなく、ボクと双子であることを公表する為に記者会見を開くって1人で勝手に決めてたこと知ったらどう思う?」
「たとえ決まったことでもズルズル引きずって、それが削れて跡形がなくなるまで引きずり尽くす他ないです」
「分かってもらえたようで嬉しいよ」