第109章 ……………あ

『あぁ、今日はここに来て良かった。幸せな気持ちになれたよ。じゃあそろそろ帰ろうか？天』

「あなたここへ何しに来たんですか！？」
「キミここへ何しに来たの！？」

『冗談だって！しんみりしちゃった空気をどうにかしようと、ね？』


一織と天から、斬れ味の良い突っ込みをもらってしまった。

壮五と環は、ラジオ局に出向いた。3人となったアイナナ寮で、私達はここに来た本来の目的を果たそうとする。


「それで、何か私にご用事らしいですが。一体どのような用向きですか？」

「え、っと。ちょっと言いにくいんだけど、一織くんのお知恵を拝借したいと言うか」

「はい？」

「彼女がピンチに陥っていて、どうすればそのピンチから脱却出来るのか一緒に考えて欲しい」

「……」


天の説明に、一織は黙り込む。顎に手を当てて、考え込んでいるようだった。ライバルである他事務所のプロデューサーから、いきなり助けてくれと言われれば、困惑して当然か。


『ま、待って。即答で断る前に、ちょっとだけでも考えて？ほらほら！何かと使い勝手の良い中崎春人さんに、恩を売るチャンスだよー？なんて…』

「は？あなた、何を的外れなことを言ってるんですか」

『うぐっ！』

「今回のことは、恩を売るではなくて、恩を返すチャンスなんですよ。今まで私達が、どれほどあなたに救われたと思っているんですか。さぁ、時間が惜しいので、何が起こっているのか早く話してください。力になれるよう、最善を尽くします」

『一織くん…』


どうして、この子達は。人の涙腺をこうも刺激してくるのだろう。


「まぁ、手を貸すかどうかは内容次第ですが」

『一織くーん！！』