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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第106章 ねぇよ




「訊いてもいいか。お前らの目的はなんだ?俺を狙ったのも、今日を狙ったのも、偶然じゃねえよな」

『楽、待ってください。私達が彼らに問い掛けるべきは、誘拐の目的じゃない。解放の、条件です』


私は、血みどろの顔面で相手を睨んだ。男は一切怯むことなく、こちらを見る。


「目的なら、訊かれなくても話してやるよ。解放の条件は、ねぇけどな」

『そんなケチケチしないで、どっちも話してくれれば良いじゃないですかー』


わざと煽っていく私に、楽はやめろと叫び、男は顳顬(こめかみ)に筋を浮かべた。
すると、別の男がどこから持って来たのか鉄パイプを取り出した。あれで殴られるのは、さすがに痛そうだ。


「やっぱりコイツがないと、会話が成立しねぇなぁ」

『やっぱりそんなモノがないと、会話を成立させられないんですね。可哀想に、期待を裏切らない低俗さです』

「おい春人!もうお前は喋」


お前は喋るな。楽がそう言い終わる前に、鉄パイプが私の頭目掛けて振り下ろされる。ようやく血が固まったのにまた傷口が破れたのだろう、再度 額から血が溢れ出す。飛び散った血が、コンクリの床を赤黒く汚した。


『……』

「声ひとつ上げねえか。暴力の振るい甲斐のねぇ奴だ」

『えーーん、いたいよー』


今度は、頭だけでなく腕や腹にも鉄パイプによる攻撃が加えられた。嫁入り前の体が、これでもかと痛め付けられる。

こんな暴力シーンを目の当たりにさせられている楽は、しきりに止めるよう叫んだ。背面で縛られた手をガチャガチャさせて、私の名を叫んだ。
思えば、彼にはいつも私の格好悪いシーンばかり見られている気がする。遠のきそうになる意識の先で、ぼんやりとそんなことを考えていた。

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