第105章 幸せになれると思う未来を掴み取るだけ
おまけ
●コンビニにて
『もう全部買っていけば良いのでは?』
「いや、ちょっと待て。天の奴、俺のセンスがどうのって言ってただろ」
(でも実は、それはもう結構どうでもよくなって来てるんだよな)
『コンビニのドーナツ選びで、センスを光らせるのは無理がありますって』
「そうは言ってもな…。仮に全種類買っていって、うわぁ。金に物言わせて全部買ったんだ?とか言われたら癪じゃねえか」
(ただ、あともう少しだけ、春人と2人でいられたらなんて。俺はどうしちまったんだか)
『ふふ、もう本当に何でもいいですって。早く決めてくださいよ』
「だから、そう簡単に決められたら初めから悩んでねぇんだよ!」
(うわ…笑った顔が、マジでエリに似て…)
「なぁ、エリはどれがいいと思う?」
『んー。私だったら、このピンクのチョコがかかったこれを……」
「あー…わるい。普通に間違えた」
(いくら似てるとしても、好きな女と仕事仲間の名前間違えるか?やっちまった…)
『す…好きな女性と、私を間違えるなんて。何をやってるんですか』
「はは。でも、あんたもいつになくノリが良かったじゃねえか」
(焦った顔。上擦った声。ますます似てる)
『き、聞き間違いかと思ったんですよ!』
「もうだいぶ前だけど、あいつともこうやって菓子を選んだことがあったんだ。まぁあの時はドーナツじゃなくてクレープだったし、悩んでたのは俺じゃなくてエリの方だったんだけどな」
(エリに逢えない日々が長くなって、でも俺の心が平穏を保って居られのは…間違いなく、春人のおかげだ)