第105章 幸せになれると思う未来を掴み取るだけ
「今日は密談が多いね」
『そうですね。どうやら私は、自分が思っていたよりも皆さんから愛してもらっているみたいです』
「ふふ、ちょっと妬ける。だから、今度はボクの番」
天が小悪魔的に笑うと、龍之介と楽は驚き顔を上げた。驚いたのは、私も同じだ。
「いいでしょ?ボクともしようよ。密談」
『え、あぁ…じゃあ、喜んで』
「話ならここですりゃいいだろ」
「聞いてなかった?ボクがしたいのは密談であって、雑談じゃない。特に、楽にだけは絶対に秘密」
人差し指を唇に当て、楽にウィンクを見せる天。その物言いに、私はこれから彼がしようとする密談の内容がなんとなく分かった。
『密談というからには、場所を選ぶとは思っていましたがまさか…。楽と龍をここから追い出すとは思ってませんでした』
「廊下とか喫茶店で出来る話じゃないから」
出て行けと天に言われた楽は、それはもう苛立ちを隠さなかった。しかし、それをなんとか宥めたのが龍之介である。まぁまぁと、彼は楽の背中を押して部屋を出て行った。扉を閉める直前、祈るような顔で天を見ていたのは私の気のせいではないだろう。
『それでは、密談とやらの内容を窺いましょうか』
「時間もないから、直球で話すね。
話したいのは、キミと楽のこと」
『私と楽の?』
「驚かないんだ。やっぱり予想してた?」
『さぁ、どうでしょう』
私はホットの珈琲をひと口含んだ。濃さはいつもと変わらないはずなのに、酷く苦く感じた。