第100章 お前、龍のこと好き過ぎだろ
「龍…お前に、聞いて欲しい話がある」
「どうしたの楽?そんなに真剣な顔で改まって…。勿論、どんな話でも聞くよ。何かあった?」
「春人のことだ」
「春人くんの?」
「お前とあいつが付き合ってることは知ってる。だから、この気持ちを何度も殺そうとしたんだ。でも…もう…」
「……待って」
「俺は、この想いを誤魔化せない」
「楽!」
「俺も、春人のことが…っ」
「っ、待っ」
『龍…、龍!』
「っは…」
私は、ついに我慢が出来ずに彼の眠りを妨げた。あまりにも苦しそうに顔を歪めて、荒く息を吐いていたから。すると彼は、額に汗を浮かべたままでベットから半身を起こした。
『大丈夫?魘(うな)されてたから、つい起こしちゃった。嫌な夢でも見た?』
「どう…だったかな」
本当に覚えていないのか、それとも覚えてはいるが内容を口にしたくなかったのか。龍之介は私の問いに答えることはしなかった。
起床の時間よりはまだ早く、まだ二度寝が許される頃合い。しかし再び眠りに就く気になれなかったのか、龍之介はもう活動を始めるらしい。私も、それに付き合うことにした。
リビングから漂うコーヒーの香りが、シャワーを浴びたばかりの私を誘う。
良い匂いだねと、キッチンカウンター越しに声を掛けても、彼は気付いていないのか顔を上げない。何を考えているのだろう。
最近、彼のこの陰った表情を目撃する回数が増えた気がする。見ているだけで、こちらの胸が締め付けられる。
私は不安から、きゅっと縮んだ心臓の上に手を置いた。