第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
夢のような時間も、やがて終わりはやって来る。私の隣で熱い溜め息を吐いている彼らにとって、この時間は長かったのだろうか。それとも短かったのだろうか。
全ての曲を歌い終えて姿を消したTRIGGERだが、終焉にはまだ早い。
そう。まだ、アンコールが残っているから。
どこからともなく、声が上がる。
「アンコール!アンコール!!」
その声は次第に熱量を増し、やがて観客達全員が懇願する。しかし…ŹOOĻだけは、TRIGGERを求める声を上げなかった。ただただ、ファンが3人を求める声に圧倒されているみたいだった。
トウマは悲しげな顔をして、視線と声を落とす。
「俺達には…アンコールなんて口にする権利はない、よな」
『どうしてですか?』
「決まってんだろ。俺達は…う、奪ったから。ファンがこんなにもTRIGGERを求めてるってのに、俺達は…
あいつらから、大事なアンコールを、奪ったんだ」
悠はトウマの言葉に、アンコールの叫びに、両耳を塞いだ。後悔の念が染み付いた顔をして、認めなければいけないものを拒絶したのだ。
私はそんな彼の両手を持って、そっと耳から外す。
『悠、駄目ですよ。しっかり聞いて。観客がTRIGGERを呼ぶ声をちゃんと聞いて。そして、自分達が彼らから何を奪ったのか、逃げずに見て』
悠は今にも泣きそうな顔をしていたが、ゆっくりと頷いて姿勢を正した。
逃げずに向き合おうとしてくれたその姿に、私は少し安堵する。
トウマも悠も。そして、虎於も巳波も。仕出かした過ちをしっかりと飲み下して、前を向いた。