第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
反応を見せたのは、天だ。しかしこちらを一瞥するも、すぐに顔を遠くに向けてしまう。
「こっち見てくれたと思ったけど…やっぱ気付かなかったのかな」
「まぁ、これだけ観客がいるからな」
2人が肩を落としたように見えるのは、気のせいではないだろう。
しかし曲が進み、いよいよラストに差し掛かったとき。天は、再びこちらへ意識を向ける。
「 —— さぁ どっちだ 」
曲の締めくくりと共に、悠達を目掛けて両手で作った銃で、撃ち抜いた。
「う、うわ!うわ!してくれた!ファンサしてくれたー!」
「はは、良かったな!
って、なんでこんなに嬉しいんだろうな…。ファンサってやつは、奥が深い」
最も効果を発揮するタイミングで、歌詞に乗せファンサに応えてくれた天。きっと後輩へ向けた、少し特別なサービスだったのだろう。私も胸にくるものがあった。
この調子で、次に行ってみようと思う。今度は、べつのうちわをトウマと巳波に差し出した。
「な、流れ的に俺達にも来ると思ってたよ…」
「まぁ郷に入っては郷に従え、ですかね」
諦めモードの2人が手にしたのは “ ウィンクして ” と書かれたうちわだった。
次の曲のスタートと共に、トウマ達はうちわをステージに向けて振る。そのメッセージを受け取ったのは、楽だった。彼は流した目で2人を見つめてから、パチンと片目を閉じる。それだけの所作で、こちらの体温がぐわっと上がる。
「ぐわっ!や、やべぇ!破壊力が、もの凄い!」
「膝が…折れそうになりました…さすが、抱かれたい男一位の色気は凄まじいものがありますね…」
「おい待て。現抱かれたい男一位は俺だ。おい、聞いてるのか」
楽のウィンクをモロに食らってしまった2人は、虎於に反応する余裕がないらしく、ただ悶絶しているのだった。