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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい




トウマは、了に付いたことを間違いだと思っているのだろうか。私がそう問い掛けると、彼は曖昧に首を振った。


「いや…どう、なんだろうな。
了さんには感謝してる。腐ってた俺を拾って、またステージに立たせてくれた。プロデュースだって、俺の望む以上の形で応えてくれた。でも正直…最近は、ちょっと行き過ぎだなって思うところもあるし」

『うん。うん…彼の、徹底されたロジカルシンキング(論理的思考)に、斬新過ぎるほどのラテラルシンキング(水平思考)は、ŹOOĻを売り出す上で遺憾無く発揮されてたからね…彼のプロモーションは、本当に唯一無二で』

「わ、悪い…俺には、あんたが何を言ってるのか全然分からねぇ…」


自分の世界に入って、ぶつぶつ言う私をトウマは止めてくれた。少し気恥ずかしくて、ひとつ咳払いをしてから話を戻す。


『ごめん、つまりね。了は、間違いなく天才ってこと。
そもそも私は、事務所の力ってアイドルの持つ武器のひとつだと考えてるから。強力なコネクションを振りかざすのも、潤沢な資金を注ぎ込むのも大いに結構。事務所にそこまでさせるのって、結局はそのアイドルが魅力的だからだもん。それらを真剣勝負に用いるのは、何の問題もないと思ってる。
ただ、了が間違ってるのは…自分のアイドルを持ち上げるのに、他所のアイドルを落としたこと』


ŹOOĻのデビューを鮮烈なものにする為に、TRIGGERのステージを奪った。ŹOOĻの居場所を業界に作る為に、TRIGGERの悪評を捏造した。それらは、どうしたって擁護することは出来ない。


「悪い…」

『え』

「今でこそ俺は、それは絶対にやっちゃいけないことだって、分かるよ。でも、あの時の俺は…了さんが、そういうことをするって分かってて、話に乗っちまったんだ。
憎い、よな。あんたの大好きなTRIGGERを傷付けた、俺達のこと」

『たしかに、そう思った時期もあったけど。でも私、ŹOOĻが好きだよ』


私が笑って言うと、トウマは目を大きく見開いた。そしてその瞳は、また潤み始める。でも今度は、涙を落としてしまう前に微笑んだ。

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