第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
内に溜まった膿を少しずつ吐き出すように、トウマは続けた。
「でも、俺達が負けたのはTRIGGERじゃない。事務所に負けたんだ。NO_MADだって、あいつらと同じくらい事務所からプッシュされてれば。莫大な金と、コネと、俺達の為に本気で動いてくれる人間がいれば!絶対…TRIGGERになんか負けなかった…!」
発される言葉は、熱くて。苦痛に歪む表情は、悲しげで。彼が1人、何年も何年もかけて育ててしまった蟠(わだか)り。その根深さを物語っていた。
『あぁ…いま、分かった』
「え?」
『どうしてトウマが “ 真剣 ” をやめてしまったのか』
彼の瞳が、動揺から乱れた。私の言葉を、これ以上聞きたくないとその目が語っている。
しかし。だからやめてあげるといった優しさを、私は持ち合わせていない。
『本気出して、真剣にやって、それでもTRIGGERに勝てなかったら…それこそ、もう言い訳のしようがないもんね?』
「っ…!んな、ことは」
『いいんじゃない?ずっと、事務所の力の差で負けたって思っていれば。楽だもんね。自分達が負けたのは、実力が問題だったわけじゃない。そうやって、言い訳を並べて自分をいつまでも騙くらかしていたらいいよ。
でもね、トウマ。自分すら騙せない嘘で、他人は決して騙せない』
「……」
彼はきっと、本心では悟っている。蟠りを育ててしまった彼の中の温床は、腐ってなどいないから。ただ、辛い現実から少し目を逸らしたくなってしまっただけだ。
そして、トウマ それは違うよ。それは逃げだよ。そう言ってくれる本当の仲間が、当時 彼の隣にいなかった。ただ、それだけのことだ。
しかし。いま、私は彼の隣にいる。だから、私が言ってやる。本当なら、その時に誰かが贈ってやらなければいけなかった、言葉を。