第99章 間違ってると思ったことは、間違ってるだろってそう言いたい
それを見たトウマは、恐怖に慄いた表情で私から距離を取る。だがそれも、この狭い個室では大した意味を成さない。
「や、やめろ!無理矢理するにしても、もう少し場所とか色々あるだろ!いくらなんでもトイレはねえよ!!」
『貴方は私に無理矢理なにをされる気でいるんですか。分かったらほら、さっさと両膝を突いてください』
「!!ま、まさか…俺にお前のを、く…咥えろって言うつもりかっ」
『あいにく私には咥えてもらうようなモノは付いてません。だからそうじゃなくて!』
このままでは話が平行線で、一向に恩人だと信じてもらえそうにない。もうこうなったら、強硬手段だ。
私はトウマに足払いをかけ、強引に膝を地面に突かせる。そして素早く洋式便座の前へ彼の頭を持っていった。
ここまであまりに素早く事が運んだ為、トウマは声も出せず ただ便器の中を見て瞬きをするだけで手一杯のようだった。
『トウマ』
「!!」
“ 顔は覚えてないし、どうやって運ばれたかも覚えてない。でも、声が…
俺が死ぬ程しんどい時、俺の名前を何回も呼んでくれた。その声だけが、未だに耳から離れねぇんだよ ”
【93章2219ページ】
トウマは、確かにそう言っていた。
『うん。苦しいね。しんどいね。頑張れ。よしよし』
「その…声」
そんな彼に、私があの時の人物だと証明するには、当時のことを再現するのが1番手っ取り早いだろう。
【83章1978ページ】
『よく頑張った。もう大丈夫かな?
ね。狗丸トウマ さん 』
「……本当に…あんたが、あの時の」
『指、突っ込む前に思い出してもらえて何よりです』