第96章 やることなすこと滅茶苦茶じゃん!
翌日の、午前11時。環は先生に言われ、起立していた。
「では四葉さん。
“ いとおかし ” の意味を教えてもらえますか?」
「…いと、おかし…。糸の、お菓子?
はっ!綿菓子だ!!」
一織は、こめかみを押さえて溜息を吐く。そして、教室の後方が楽しげに騒めき立った。ちなみに、その中にあいつの姿はない。
古文の授業が終わり、父母達が誰一人居なくなっても。奴は現れなかった。
表現のしにくい、複雑な心境だった。腹立たしいような、ほっとしたような。とにかく、オレは間違っていなかったのだ。やっぱり他人なんて、信用するものではない。
だから、これで良かったのだ。これで、オレの心は誰にも傷付けられないで済む…
「四葉さん。ちょっと」
「ん…」
「亥清さん、落ち込んでしまったじゃないですか。中崎さんは、今日 本当に来られると仰っていたんですか?」
「うん。ほら」
《 行けたら行く 》
「…はぁ。あなたは馬鹿ですか。これは来られない人間が使う常套句ですよ」
「いおりんまで、俺のこと馬鹿って言う…」
「まったく。人様の事情に軽々しく首を突っ込むから、こういうことになるんです。次からは、自重してください」
「っかしーなー。俺のカンじゃ、中崎さんは来ると思ったんだけど」
「お忙しい方ですからね。昨日の今日では、難しいと思いますよ」
オレは、こそこそと話す2人の背後から声を掛ける。
「オレに興味がないだけだろ。単純な話だ。やっぱり嘘だったんだよ。オレのことを知りたいとか、そんなふうには思ってなかったんだ。あいつは」
そんなことより、早く昼飯を食わないと時間なくなるぞ。オレがそう告げると、2人は悲しげな顔を見合わせた。